波を切り、滑るように海面を走る。風景が加速する。
船頭に寝そべると、まるで白い鳥が羽を広げたようだ。
さあ、どんどん進め。

陽の光が透明になっていく。風の力。
「何か」に向かって行く時の、恍惚とした緊張感。
でもそれも、風と潮で「風化」していく。目的地も忘れてしまった。

意識の中の脆弱さを陽にさらけ出す。天然の沸騰消毒。
光は雄弁に物語りを語り、細胞が浮き足立ち、
そして風が心地良く吹き飛ばす。

大好きだったドゥービーの昔のヒットソング。ちょっともじって
「ロング・フォレイン・ランニング」。乾いたアメリカの地を走る列車と、
この異国の海原を走る船が重なり合う。

潮だ。内陸は塩の湖ができる程、塩に満ち溢れている。真白い塩。
そして船の上は常に潮風にさらされている。
共通項は潮だったのだ。

見知らぬ島に降り立つ。外からの人に興味を示さず、黙々と暮らす人々。
様々な色の衣服が、まるで国旗のように風にたなびく。
乾いた原色。風と潮で幾重にもなめされた色の味わい。

強烈な日射しにしか出せない色がある。
深い影の強いコントラストが、黒っぽく色調を整える。
くっきりとしていて、どこか寂しい。

日なたくさい懐かしい匂い。ほんのわずかの異邦人。
声をかけても無言の子供達。
帰り際に振った手に、「はにかみ」なんて忘れてた言葉を思い出す。

そしてまた目的地に向かう。
一年という月日の後、そこはどんな表情を見せてくれるのかな。
でも旅の半分は、行くまでのインスピレーションで終わる。

帰ったら、まずサンミゲルだ。
それも汗をかいた、キンキンに冷えたヤツを。

-----カビラオに向かうバンカーボートにて